ブランディングは、伝えることも大切なポイント。伝え方ひとつでブランド力に大きく差がつくこともあります。ここでは、ブランドコミュニケーションについてご紹介します。
1、良いもの”を作っているだけでは、なぜ届かないのか?
「うちの製品は、どこにも負けない技術で作っている」
「このサービスの質は、業界でもトップクラスだと自負している」
企業の経営者であれば、自社が提供するものに確固たる自信と誇りをお持ちのことでしょう。血の滲むような努力と情熱を注ぎ込み、ようやく形になった製品やサービス。それは、我が子のように愛おしい存在かもしれません。
しかし、その一方で、こんな悩みを抱えてはいませんか?
「これだけ良いものなのに、思うように売上が伸びない」
「競合他社はうちより品質が劣るのに、なぜか選ばれてしまう」
「お客様に、この価値が正しく伝わっていない気がする」
その悩み、決してあなただけのものではありません。情報が洪水のように溢れ、消費者の選択肢が無限に広がった現代において、「良いものを作れば、自然と売れる」という時代は、残念ながら終わりを告げました。
顧客は、単に機能やスペックが優れた「モノ」を求めているのではありません。その「モノ」が自分の生活をどう豊かにしてくれるのか、自分の悩みをどう解決してくれるのか、そして、その「モノ」を生み出した企業がどんな想いや哲学を持っているのか。そうした「意味」や「価値」を求めているのです。
もし、あなたの会社の素晴らしい製品やサービスが、顧客の心に響いていないとしたら。それは、製品の質が問題なのではなく、その価値を伝える「伝え方」に課題があるのかもしれません。
今回のコラムでは、企業の未来を左右する重要な経営課題、「ブランディングにおける“伝える”ことの改善」に焦点を当てます。なぜ「伝える」ことが重要なのか、そして、どうすれば自社の価値を正しく、魅力的に伝えることができるのか。具体的な事例を交えながら、その核心に迫っていきたいと思います。
2、その「こだわり」、顧客に正しく伝わっていますか?
多くの企業が、自社の製品やサービスの「こだわり」を伝えようと努力しています。Webサイトやパンフレットには、専門的な技術仕様、素材の優れた点、独自製法の解説などが並びます。しかし、その「作り手目線のこだわり」が、果たして顧客に正しく伝わっているでしょうか。
ブランディングにおける「伝える」とは、単なる情報伝達ではありません。スペックや機能を一方的に説明することではなく、自社の価値や想いを、顧客の心に響く「物語」として届け、共感を育むコミュニケーション活動そのものです。
3、ブランドコミュニケーションの事例をご紹介。
□スノーピーク社 ―「モノ」ではなく「体験」を売る
※この内容は弊社の私見です。
高品質なキャンプ用品で知られるスノーピーク社。彼らの製品は決して安価ではありません。しかし、その価格にもかかわらず、多くの熱狂的なファン(彼らは自らを「スノーピーカー」と呼びます)に支持され続けています。なぜでしょうか。
その秘密は、彼らが単なる「キャンプ用品」を売っているのではないからです。彼らが一貫して伝えているのは、「人間性の回復」という壮大な理念であり、キャンプという行為を通じて得られる「豊かな人生体験」という価値です。
彼らのWebサイトやカタログには、製品のスペック情報と同じか、それ以上に、家族や仲間と焚き火を囲む笑顔、自然の中でリラックスする人々の姿、そして、製品開発に込められた作り手の想いやストーリーが溢れています。彼らは、「このテントは最新素材で防水性が高い」と伝えるだけでなく、「このテントが、あなたと大切な人のかけがえのない時間を、どんな天候からもしっかりと守ります」という物語を伝えているのです。
顧客は、製品の機能性に魅力を感じるだけでなく、スノーピークが描く世界観やライフスタイルに共感し、「スノーピーカー」であることに誇りを感じるようになります。これこそ、「伝える」ことによって強力なブランドを築き上げた、見事な事例と言えるでしょう。
□架空の企業で一緒に考えてみましょう。「技術は一流、でも伝わらなかった町工場の挑戦」
一方で、こんな架空のケースを考えてみましょう。
A製作所は、精密な金属加工技術を持つ、社員数 約100名の町工場です。その技術力は大手メーカーからも一目置かれるほど。しかし、長年下請け仕事が中心で、経営は常に不安定でした。社長は自社の技術を活かしたオリジナル製品を開発しましたが、鳴かず飛ばず。製品カタログには「サブミクロン単位の加工精度」「特殊合金採用による高剛性」といった専門用語が並び、その価値が一般の顧客には全く伝わっていなかったのです。
ある日、社長はブランディングの専門家からこうアドバイスを受けます。「その技術は、お客様の“何”を解決するのですか?」
社長はハッとしました。自分たちは「何ができるか(What)」ばかりを伝え、「なぜそれを作るのか(Why)」、そして「顧客にどんな良いことがあるのか(Benefit)」を全く伝えていなかったことに気づいたのです。
そこからA製作所の挑戦が始まりました。彼らは、自社の精密加工技術が「熟練の職人でさえ難しい、繊細な作業をサポートできる」という価値に着目。ターゲットをプロのパティシエに絞り、「あなたの創造性を解き放つ、魔法のようなツール」というコンセプトで製品を再設計。Webサイトでは、技術仕様の説明は最小限にし、代わりに、そのツールを使ったパティシエが、いかに美しいケーキを、いかに楽しそうに作っているかという映像をメインに据えました。
結果、製品はSNSで話題となり、プロのパティシエたちの間で「なくてはならない道具」として認知されるように。下請け仕事に依存していた経営体質からも脱却することができたのです。
この2つの事例から分かるように、「伝える」ことの改善は、単なる見せ方の問題ではありません。自社の価値の「本質」は何かを深く見つめ直し、それを顧客の心に届く言葉や物語に翻訳する、極めて戦略的な経営活動なのです。あなたの会社の「こだわり」、顧客が本当に知りたい形で伝わっているか、今一度、見直してみてはいかがでしょうか。
4、明日からできる、「ブランドコミュニケーション」3つのステップ
「伝えることの重要性は分かった。しかし、具体的に何から始めればいいのか…」
そう感じている経営者の方も多いかもしれません。ブランディングというと、大規模な広告キャンペーンやWebサイトのリニューアルを想像しがちですが、その根幹にあるのは、もっと地道で本質的な作業です。ここでは、明日からでも取り組める、ブランドコミュニケーションとして「伝える」を変えるための3つのステップをご紹介します。
Step1:自社の「核」となる価値を再定義する
すべての出発点は、自社の存在意義、つまり「自分たちは何者なのか」を改めて問い直すことから始まります。これは、経営者自身が、誰よりも深く考え抜かなければならないテーマです。
以下の質問に、じっくりと向き合ってみてください。
私たちは、社会や顧客にどんな価値を提供するために存在するのか?
(例:「単に家を建てる」のではなく、「家族の幸せな時間を育む空間を提供する」)
製品やサービスを通して、顧客にどんな理想の未来(状態)を届けたいのか?
(例:「最新の会計ソフトを売る」のではなく、「経営者が数字の悩みから解放され、本業に集中できる未来を届ける」)
なぜ、この事業を始めたのか?創業時の「想い」や「原体験」は何か?**
(例:先代が苦労した経験から、「中小企業の資金繰りを助けたい」という想いで金融サービスを始めた)
ここで重要なのは、「モノ」や「スペック」から一度離れ、「コト」や「意味」のレベルで自社の価値を捉え直すことです。綺麗事を並べる必要はありません。経営者自身の言葉で、情熱を込めて語れる「核」を見つけることが、ブレないブランドメッセージの土台となります。この「核」こそが、あなたの会社にしか語れない、独自のストーリーの源泉となるのです。
Step2:コミュニケーションの「相手」を深く理解する
次に、その価値を「誰に」伝えたいのかを明確にします。「すべての人」をターゲットにするのは、結局「誰にも」響かないメッセージになってしまう危険性を孕んでいます。
理想の顧客像、いわゆる「ペルソナ」を具体的に設定してみましょう。
名前、年齢、性別、職業、家族構成は?
どんなライフスタイルを送っている?
普段、どんなことに悩み、どんなことに喜びを感じている?
どのような情報源(雑誌、Webサイト、SNSなど)を信頼している?
ペルソナを具体的に描くことで、相手の心に響く「言葉遣い」や「表現方法」が見えてきます。例えば、20代の若手起業家に伝えるメッセージと、60代のベテラン経営者に伝えるメッセージでは、使う言葉も、刺さるポイントも全く異なるはずです。
顧客を「大衆」として捉えるのではなく、たった一人の「あなた」に向けて語りかける。その意識が、メッセージの解像度を格段に高め、強い共感を生み出します。顧客アンケートやインタビューを実施し、生の声に耳を傾けることも、相手を深く理解する上で非常に有効です。
Step3:「伝え方」の表現を磨き上げる
自社の「核」が見つかり、伝える「相手」が明確になったら、いよいよ具体的な「伝え方」を磨き上げていきます。
言葉を磨く:
専門用語や業界用語を、ペルソナが使う日常の言葉に翻訳しましょう。「高耐久性素材」ではなく「お子さんがやんちゃに扱っても、10年後も安心して使える丈夫さ」のように、顧客のメリットが具体的にイメージできる言葉を選びます。キャッチコピーやWebサイトの文章、ブログ記事など、すべての言葉を見直してみましょう。
ビジュアルで語る:
人は文字情報よりも、写真や映像から多くの情報を瞬時に受け取ります。あなたの会社のブランドイメージに合ったデザイン、色、写真を選定していますか? 例えば、「信頼感」を伝えたいのであれば、誠実さを感じさせる青色を基調としたデザインや、スタッフの真剣な眼差しが伝わる写真が有効かもしれません。「親しみやすさ」を伝えたいなら、暖色系の色使いや、顧客とスタッフの笑顔溢れる写真が効果的でしょう。
物語を語る:
ステップ1で見つけた「核」となる価値や創業時の想いを、具体的なエピソードを交えたストーリーとして語りましょう。開発の裏にあった苦労話、お客様からいただいた感動的な一言、製品名に込められた意外な意味。そうした生身の物語は、スペックの羅列よりも遥かに強く、人の心を惹きつけ、記憶に残ります。
これらのステップは、一度やれば終わりではありません。市場や顧客の変化に合わせて、常に見直し、磨き続けていくことが重要です。まずは、自社のWebサイトのトップページや、会社案内のパンフレットから見直してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、会社の未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
5、ブランドコミュニケーションが、会社の未来を創る
ここまで、ブランドコミュニケーションの重要性と、その具体的なステップについてお話してきました。
情報過多の時代において、顧客はもはや「良いモノ」というだけでは心を動かされません。そのモノの背景にある「想い」や「物語」に共感し、その企業を「応援したい」と感じた時に、初めて購買という行動に移るのです。
「伝える」ことを見直すプロセスは、単なるマーケティング手法の改善に留まりません。それは、
「我々は何のために存在するのか?」
「誰を、どのように幸せにしたいのか?」
という、自社の存在意義そのものと向き合う、尊い時間です。
経営者であるあなたの心の中にある熱い想い、製品やサービスに込めた比類なきこだわり。それらは、まだ見ぬ多くの顧客の心を動かし、ファンに変える可能性を秘めた、何よりも尊い「資産」です。しかし、その資産も、正しく「伝え」、相手に「伝わらなければ」、存在しないのと同じになってしまいます。
今こそ、その素晴らしい価値を、正しい言葉と表現で、世の中に解き放つ時です。
「自社の魅力が、うまく言葉にできない」
「何から手をつけていいか分からない」
もしそう感じていらっしゃるなら、ぜひ一度、未来公園にご相談ください。あなたの会社の内に眠る輝きを見つけ出し、それを未来の顧客に届けるための道筋を、共に描き出すお手伝いができるはずです。
伝える力が、顧客との絆を深め、社員の誇りを育み、そして、会社の未来を創り出します。あなたの会社の物語が、世界中に響き渡る日を、心から楽しみにしています。
初期のヒアリング&ディスカッションは無料です
自社を変革させたい!何か新しいことに取組みたい!という想いがあっても、コンサルティングって、どんなことをするかよくわからなかったり、金額が高いのでは‥‥。という不安も多いと思います。私たちのイノベーションプログラムが本当に必要なのかどうか。。どのような取組みなのか。。
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まずは、じっくりと「お話しましょう」。
